日本財団 図書館


ここで浮体の構造的な面からの特徴を考えてみると、この構造は、当然のことながら、基本的には波・潮流に対して透過型であり、自然環境に与える影響は少ない。したがって浮体構造の構築は地球環境に対して優れていると言う点で、施工条件の多様化とともに今後大いに有望となる工法である。
浮体構造物による人工島の造成は、現地施工型の埋立方式に対して、プレファブ型とも言えるものである。即ち、工場で鋼製、コンクリート製、等の構造体を製作し、組立て、建設地に運搬し、人工島を造成する工法である。この方式は、海底面に設置する着底型と浮力を利用した浮体式に大別出来る。図3.1.2に方式の分類が示されている。
これらの方式の実績は、埋立方式に比べはるかに少ないが、こらまでのかなりの技術的蓄積がある。我が国では、沖縄のアクアポリス、上五島及び白島の石油備蓄基地等があるが、世界的には石油・ガス関連の施設が大部分を占めており、埋立方式のような広大なものは極めて少ないので経済性の評価は難しい。建造コストに影響する要因としては、概造形式をはじめとして、設置場所の水深、海象、海底地盤・土質等が考えられる。運輸省の調査によれば、浮体方式の場合、水深が20mを越えると、造成単価はそれほど上昇しなくなると言われており、大水深の場合には浮体の経済性が期待出来そうである。

 

076-1.gif

 

参考文献:
1)運輸省港湾局:沖合人工島/新しい国土の創造と総合的な海域利用
2)伊藤喜栄:人工島の利用形態/土木学会誌増刊/人工島/1993 Vol.78-12
3)渡辺英一:「大規模浮体構造物の特性(社会的意義、経済性、技術的特徴)とその利用の展望」/(財)大阪科学技術センター;第17回0STEC講演会テキスト、平成6年3月22日
4)(社)日本鋼構造協会:ゆたかな沿岸、海洋空間をもとめて/大阪湾沿岸空間の有効活用に関する調査研究報告書,1991.3

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION